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【無理】SIerのシステム開発現場ではテレワークを導入できない理由【今さら手遅れ】

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新型コロナでテレワーク推進が叫ばれるなか、大手SIerシステム開発現場ではテレワークを導入できない理由

コロナ影響でテレワーク推進が叫ばれてますが、SIerシステム開発現場では、「テレワークなんて無理だ」というところが多いと思います

新型コロナの影響で、3月4月になってから、「急に」テレワーク導入する会社が増えているみたいですね。
しかし、大手SIerシステム開発の現場では、テレワーク・在宅勤務をやれと言われても、
難しいのが現実ではないかと思っています。

SIerシステム開発がテレワーク化できない一番の理由

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  1. SIerシステム開発は、複数の会社(ユーザー企業、元請の大手SIer、多くのパートナー企業)の集合体だから
  2. しかしテレワーク環境が利用できるのはユーザー企業だけで、SIerやパートナーには使わせてもらえない

システム開発の現場でテレワークが導入できない一番の理由は、これだと思っています。

「セキュリティ」「情報漏洩」の壁があるせいで、テレワーク環境がずっと整備されていない開発現場がほとんどだと思います。在宅勤務とかいう以前に、開発用のネットワークには社外からは一切繋がらない、というのが一般的ではないでしょうか

テレワーク用のノートPCを用意するどころか、パートナー会社の開発メンバーに貸与されているのは、20年前の古いデスクトップPCで、基本的に開発者のPCは外部ネットワークには一切繋がらない。テレワークなんて都市伝説です

「セキュリティ」の壁をクリアしたテレワーク環境を、SIerやパートナー会社の開発メンバー全員が使えるようにするのには、当然費用がかかりますが、 そもそも、ユーザー企業側でさえ十分に整っていない状態のなか、どうしても開発現場向けのものは後回しにされてしまうのは仕方がない、と誰もが諦めていると思います。

基本的に資料は、社内の共有ファイルサーバ上のEXCELで、
会議のときは、EXCEL資料やPowerPoint資料を人数分、紙に印刷して配る、
というのがSIerの昔ながらのやり方です。
(そのために、EXCELの改ページ位置、はみ出し、フォント、等の見た目を綺麗にすることに、SIerの社員は命を懸けています)

TeamsやSkypeやZoomなどのWeb会議ソフトも使えないし、Slackなどのチャットツールも無い、
そもそもそんなソフト、知らない・聞いたことが無い、というのがSIerです。

SIerが開発をしているシステムのなかには、
ユーザー企業の社内ネットワークからしかアクセスできないシステムも多いと思います。
在宅勤務でシステムに接続するには、当然、VPN、VDI、DaaS等のサービスが利用できる環境が必要になりますが、
そいうのも、「セキュリティ」を理由に、ユーザー企業だけが使えて、開発者には使わせてもらえないのが現実です。

そもそもテレワークどころか時差出勤すら困難な現場

コロナの影響でテレワークが叫ばれる少し前は、満員電車を避けるためにオフピーク・時差出勤が叫ばれていましたが、 それすら、SIerの開発現場では困難だったと思います。

複数のパートナー会社と一緒に1つのオフィスに集まって働くSIerの開発現場では、
オフピーク・時差出勤ですら不可能です。パートナー会社の人間だけがオフィスに出社するわけにいかないので、
必ず社員の人間が付き添わなければいけないからです

元請会社と、その配下のパートナー会社、さらにその配下の再委託パートナー会社、さらにその配下の・・・
と複数の会社の開発メンバーが1つのオフィスに集まって、 というのがSIerの開発現場です。

そんな複数の会社が、一斉にテレワークを利用できるように、というのは相当に難しいと思います。
テレワークに限らず、新しい仕組みが導入されるときはたいての場合、
「セキュリティ」を理由に「利用できるのは社員のみ」ということになってしまうからです。

www.orangeitems.com

ユーザー企業がいくらテレワークのためのインフラを準備しようとしても、そのインフラはユーザー企業の社員しか利用できないのが現実です。メールやチャット、社内の基幹システム等に、元請配下をアクセスさせることはできないのです。「セキュリティー」が大きく絡むからです。

一方で、元請の企業にも「今日から全社員テレワーク!」と言う指令が下ったとしましょう。そもそもこのプロジェクト、ユーザー企業のオフィスで作業することが必要かどうかが問題となります。要件定義・設計がリモートで進められるかについて難しい調整が必要になるでしょう。

もっと深刻なのが、下請です。上流担当とコミュニケーションを取らないで実装するなんてできるはずがありません。ドキュメントがあれば実装できるでしょ・・とはいかないのがSIです。かつ、もし下請がオフィスへ出勤するとすれば、元請もユーザー企業の面前で出社せざるを得ません。

例えば、元請のオフィスで持ち帰り作業とするとしても、そこに下請が出勤するのならば同じく、元請が管理監督しなければいけませんから、こちらも出社が必要になります。 テレワークはそもそも無理なSI業界/右往左往している様子が目に浮かぶ(orangeitems’s diary 2020-02-27)

システム開発の要であるパートナー会社のベテラン有識者が万一感染したらそのシステムは終わり

元・日経コンピュータ編集長の木村岳史氏は、こんなことも書いてました。

xtech.nikkei.com

断っておくが、私はテレワークを導入せよと言っているわけではないぞ。もちろん技術者が自宅などからテレワークで保守運用業務を担うのは十分可能だと思うが、その前段としてリモートによる保守運用に切り替えろと言っているのだ。なぜITの業務なのに、物理的に1カ所に技術者をかき集めなければならないのか。どうせITベンダーに丸投げするのだったら、ITベンダーのサイトで業務を担ってもらえばよいではないか。 新型コロナが感染拡大、それでも技術者に「常駐」強いるユーザー企業の愚かさ(日経クロステック 2020.03.02)

この木村岳史氏の記事で特に印象に残ったのは、
「常駐技術者たちは疲労の極致に達し、大きなストレスをため込む。その結果、免疫力を落として新型コロナウイルスに感染するような事態となれば、これはもう人災としか言えない。」
という言葉。
昔ながらの開発スタイルのシステムでは、
パートナー会社の仙人のようなベテラン有識者が開発の要になっていることが多いと思うので、
そういうベテラン有識者が万一、感染して何週間も仕事ができないような状況になったら、
そのシステムはもう終わりだと思います。

“アフターコロナウイルス”の新世界

“アフターコロナウイルス”の新世界として、
「顧客に言われた通り作り続ける多重下請けの受託型・派遣型の人月ビジネスが崩壊する」そんな時代が迫っているそうです。

元・日経コンピュータ副編集長の田中克己氏は、以下の記事を書いていました。

japan.zdnet.com

SI業界も新型コロナの収束後、ビジネス形態が一変するだろう。システムを作ることが目的だったIT企業に、顧客の収益や新規ビジネスの創出などに貢献するサービスの提供が求められる。それが、顧客がパートナーを選ぶ理由の1つにもなる。顧客にDXの重要性を説くIT企業自身がデジタル化を取り入れなかったら、誰もデジタル活用の実績を信用しないだろう。ITを駆使した社会課題の解決になれば、その傾向はますます高まる。 新型コロナが促すSI業界の構造改革(ZDNet Japan 2020-03-16 06:00)

テレワークの導入を阻むさまざまな障壁

テレワークの導入を阻む会社の4つの壁

  1. 経営層のテレワークに関する理解の不足
  2. 先入観・固定観念が強い「食わず嫌いな層」の拒絶
  3. テレワーク関連ツールの導入コスト
  4. 従業員の自立性・主体性・マネジメントスキル

以下の記事に、テレワークがなかなか導入されない理由がまとめられていました。

suplab.jp

テレワークの導入を阻む会社の4つの壁
壁1.経営層のテレワークに関する理解の不足
経営層のテレワークに対する理解が乏しいため、先行実施(トライアル)の着手、さらにはそのあとの本格導入(制度化)まで進まないといったケースが多く見受けられるようです。
壁2.先入観・固定観念が強い「食わず嫌いな層」の拒絶
「うちの業界はそもそもテレワークに向いていない」「目の前に部下がいないと仕事をしているか不安」「部内で自分だけやるのは何となく気が引ける」等、先入観・固定観念が強い「食わず嫌いな層」の拒絶により、経営層や従業員の要望があっても全社的に導入できない場合があります。
壁3.テレワーク関連ツールの導入コスト
実際にテレワークを導入するとなった場合でも、ノートPC、リモート作業、モバイルデバイスWi-fiルータ等、テレワーク実施者への貸与品の購入・リースが高額化する可能性があり、コスト的な理由で導入を見送る企業もsくなく内容です。
壁4.従業員の自立性・主体性・マネジメントスキル
特に管理職は、従業員の業務管理をすることが仕事ですから、テレワークをする従業員が「サボるのではないか」「隠れ残業をするのではないか」といった懸念を抱きがちです。 テレワークの導入を阻む会社の4つの壁とは?企業のテレワークの課題・解決策を分かりやすく簡単に解説!(HRメディア サプラボ - Sup Lab 2020年3月9日)

多くの企業は以下の3つの壁にも直面しているらしい

  1. セキュリティの壁
  2. コミュニケーションの壁
  3. 労務管理の壁

active.nikkeibp.co.jp

しかし実際にテレワークを始めてみると、「多くの企業は三つの壁に直面する」と成瀬氏は指摘する。
三つの壁とは、セキュリティの壁、コミュニケーションの壁、そして労務管理の壁だ。 テレワークに立ちはだかる「三つの壁」を乗り越えよう(日経XTECH ALIVE 2017/08/30)

これからのSIer業界

そもそも、テレワークどころか、時差出勤すら認められていないような開発現場が多いなか、
そろそろSIerという「働き方変えたくない」業界で働くのはそろそろ限界なのかもしれません。